test – 倉敷ひろた整骨院

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倉敷ひろた整骨院院長 / FOCUS代表
（公社）岡山県柔道整復師会学術部 / PEAX講師
岡山整和会代表｜

内側側副靱帯(Medial Collateral Ligament: MCL

内側側副靱帯(Medial Collateral Ligament: MCL)は、膝関節の主要な静的安定化機構の一つであり、特に外反ストレスに対する主要な抵抗体として機能します。脛骨と大腿骨の内側を結び、膝関節の過度な外反を制限し、回旋安定性にも寄与します。MCLの損傷は、スポーツ外傷で非常に一般的であり、その解剖学的特徴と機能的役割の理解は、診断と治療において不可欠です。

解剖学的構造と層構造
MCLは、単一の構造ではなく、複数の層から構成される複合体として理解されています。主に以下の2つの主要な層に分けられます。

浅層（Superficial MCL: sMCL）:

起始: 大腿骨内側上顆のやや後方、内転筋結節の遠位に起始します。
停止: 脛骨近位部内側の、関節面から約2.5〜7cm遠位に停止します。この停止部は、ガチョウ足（pes anserinus）の腱の深層に位置します。
走行: 長く、幅広の線維束であり、膝関節を橋渡しするように斜め前方に走行します。
機能: 主に膝関節の外反ストレスに対する主要な抵抗体として機能します。また、膝関節の伸展位では特に緊張し、屈曲位では弛緩します。
深層（Deep MCL: dMCL）:

起始・停止: 大腿骨内側上顆から脛骨の内側関節面に付着します。sMCLよりも短く、関節包と密接に結合しており、内側関節包靱帯とも呼ばれます。
走行: 短い線維であり、関節包の深層に位置します。
機能:
外反ストレスに対する補助的な抵抗体として機能します。
内側半月板と結合: 深層の線維は、内側半月板の中間部と直接結合しており、内側半月板を脛骨プラトーに固定する役割を果たします。この結合のため、MCL損傷時には内側半月板損傷を合併するリスクが高くなります（O'Donoghueの不幸の三徴候の一部）。
膝関節の回旋安定性、特に外旋に対する抵抗に寄与します。
これらの2つの層は、膝関節の屈曲角度に応じて、その張力と安定化への寄与が変化します。一般的に、MCL全体として、膝関節の伸展位で最も緊張し、外反安定性に寄与します。屈曲位では、浅層がやや弛緩する一方で、深層が回旋安定性により寄与すると考えられています。

周囲の関連構造
MCLの周囲には、膝関節の安定性に関与する複数の軟部組織が存在します。

後斜靱帯 (Posterior Oblique Ligament: POL): MCLの深層、後方に位置し、大腿骨内側上顆から脛骨の内側顆後内側部に停止します。膝関節の伸展位での安定性、特に過伸展と外反、そして回旋安定性（特に外旋）に強く寄与します。MCL損傷時に合併損傷しやすい構造です。
ガチョウ足 (Pes Anserinus): 縫工筋、薄筋、半腱様筋の3つの腱が集合して脛骨内側に付着する部位であり、sMCLの表層を覆っています。
内側半月板: dMCLと直接結合しており、MCL損傷時の合併損傷のリスクがあります。

機能的役割
MCLの主要な機能は以下の通りです。

外反安定性: 膝関節の外反（下腿が外側に開く動き）を制限する最も重要な靱帯です。
回旋安定性: 特に膝関節の伸展位での外旋を制限するのに貢献します。
前方・後方安定性への寄与: ACLやPCLほどではないものの、わずかに前方・後方への脛骨の移動を制限する役割も果たします。

臨床的意義
MCL損傷は、膝関節の外反ストレスによって発生することが最も一般的です。スポーツ活動中（特にフットボール、スキー、ラグビーなど）に、膝の外側からの直接的な衝撃や、足が地面に固定された状態での体幹のねじれによって引き起こされます。

損傷の分類: 一般的に、損傷の程度により3段階に分類されます。
Grade I: 軽度の損傷。線維の微細な断裂で、痛みはあるものの安定性は保たれている。
Grade II: 部分断裂。外反不安定性が中程度に認められる。
Grade III: 完全断裂。外反不安定性が著しい。他の靱帯損傷（ACLなど）を合併していることが多い。
症状: 膝関節内側の疼痛、腫脹、圧痛、不安定感（特に外反ストレス時）が典型的です。

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大腿四頭筋(Quadriceps Femoris Muscle)は、大腿前面に位置する人体で最も強力な筋群の一つであり、膝関節の伸展と股関節の屈曲（一部の筋）に主に関与します。その名の通り、4つの独立した筋（大腿直筋、外側広筋、内側広筋、中間広筋）から構成され、共通の腱を介して膝蓋骨および脛骨粗面に付着します。この筋群の機能と解剖学的特徴を理解することは、下肢の運動機能、姿勢制御、および様々な整形外科的疾患の評価と治療において極めて重要です。

構成筋と解剖学的特徴
大腿四頭筋を構成する4つの筋は、それぞれ異なる起始を有し、特定の機能的役割を分担しています。
大腿直筋 (Rectus Femoris):
起始: 下前腸骨棘 (anterior inferior iliac spine: AIIS) および寛骨臼上縁 (superior margin of the acetabulum)
特徴: 大腿四頭筋の中で唯一、股関節を越えて起始するため、膝関節の伸展に加えて、股関節の屈曲にも作用します。二関節筋であり、その機能は膝と股関節の同時運動に影響されます。筋線維は羽状構造を示します。
外側広筋 (Vastus Lateralis):
起始: 大腿骨の転子間線の上部、大転子前方縁、殿筋粗面、大腿骨粗線の外側唇 (intertrochanteric line, greater trochanter, gluteal tuberosity, lateral lip of linea aspera)
特徴: 大腿四頭筋の中で最も大きく強力な筋であり、大腿の外側を覆います。膝関節の伸展において主要な役割を果たします。
内側広筋 (Vastus Medialis):
起始: 大腿骨の転子間線の下部、恥骨筋線、大腿骨粗線の内側唇、内側顆上線 (intertrochanteric line, pectineal line, medial lip of linea aspera, supracondylar line)
特徴: 大腿の内側に位置し、特に膝蓋骨の内側安定性に寄与する線維（内側広筋斜走線維: VMO; vastus medialis obliquus）を有します。このVMOの機能不全は、膝蓋骨の外側偏位や膝蓋大腿関節痛症の原因となることがあります。膝関節の伸展、特に最終伸展位において重要な役割を果たします。
中間広筋 (Vastus Intermedius):
起始: 大腿骨前面および外側面の上部3分の2 (anterior and lateral surfaces of the upper two-thirds of the femur)
特徴: 大腿直筋の深層に位置し、大腿骨に直接付着します。純粋な膝関節伸展筋であり、その作用は他の広筋群によって覆い隠されることが多いですが、膝関節の伸展力に大きく貢献します。関節膝筋 (articularis genus) は、中間広筋から派生した小さな筋であり、膝関節伸展時に関節包を上方に引き上げ、滑膜の挟み込みを防ぐと考えられています。
共通の停止腱
これら4つの筋は、共通の大腿四頭筋腱 (quadriceps tendon) を形成し、膝蓋骨の上縁に付着します。膝蓋骨を越えて、この腱は膝蓋靭帯 (patellar ligament / patellar tendon) となり、脛骨粗面 (tibial tuberosity) に停止します。

神経支配
大腿四頭筋は、大腿神経 (femoral nerve) によって支配されます。大腿神経は、腰神経叢 (L2-L4) から起始し、大腿三角を通過して大腿前面の筋群に枝を供給します。

機能的役割
大腿四頭筋の主要な機能は以下の通りです。
膝関節の伸展: 大腿四頭筋の主要な作用であり、歩行、走行、跳躍、階段昇降、立ち上がり動作など、日常生活のあらゆる場面で不可欠です。
股関節の屈曲: 大腿直筋のみがこの作用を有し、歩行時の遊脚相などで股関節の屈曲を補助します。
膝蓋骨の安定化: 特に内側広筋のVMOは、膝蓋骨を内側に引きつけ、膝蓋骨が外側へ脱臼するのを防ぐ上で重要な役割を果たします。
衝撃吸収と重心制御: 立位や着地時などにおいて、膝関節の屈曲を制御することで衝撃を吸収し、重心を安定させる役割を担います。

臨床的意義
大腿四頭筋は、その機能的役割の重要性から、様々な臨床病態に関与します。
大腿四頭筋の筋力低下:
原因: 変形性膝関節症、半月板損傷、前十字靭帯損傷などの膝関節疾患、脊髄神経根症（L2-L4）、大腿神経麻痺、脳卒中、廃用性萎縮など多岐にわたります。
症状: 立ち上がり、階段昇降、歩行時の膝折れ（buckling）、膝関節の不安定性などが生じます。
大腿四頭筋腱断裂 / 膝蓋靭帯断裂: 強い外力（転倒、直接打撃など）によって発生し、膝関節の伸展不能、著しい腫脹、疼痛を伴います。整形外科的緊急疾患であり、通常は手術的修復が必要です。
スポーツ外傷: 大腿直筋の肉離れ（ストレーン）は、スプリントやジャンプなどの高強度運動を行うアスリートによく見られます。

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踵腓靭帯(Calcaneofibular Ligament: CFL)は、足関節の外側側副靱帯複合体 (lateral collateral ligament complex) を構成する主要な靭帯の一つであり、足関節の安定性に極めて重要な役割を果たします。特に、足関節の背屈位での内反を制限する上で不可欠な構造です。

解剖学的起始と停止
踵腓靭帯は、腓骨の外果 (lateral malleolus) 先端部から起始し、斜め後下方に走行して、踵骨 (calcaneus) の外側面に停止します。

起始: 腓骨外果の先端部、またはそのやや前下方 (tip or slightly anteroinferior aspect of the lateral malleolus of the fibula)

停止: 踵骨の外側面、特に腓骨筋腱滑車 (peroneal trochlea) の後方にある小結節 (a small tubercle posterior to the peroneal trochlea on the lateral surface of the calcaneus)

構造と特徴
踵腓靭帯は、前距腓靭帯 (anterior talofibular ligament: ATFL) や後距腓靭帯 (posterior talofibular ligament: PTFL) とは異なり、足関節包とは独立した、より太く強固な線維束として存在します。その走行は、前距腓靭帯よりも垂直に近い角度であり、足関節の可動域によって緊張度が変化します。

緊張度の変化: 足関節が背屈位（足首を上に曲げる）になると、踵腓靭帯はより緊張し、その安定化機能が増強されます。逆に、底屈位（足首を下に伸ばす）になると、緊張が緩みます。この特性により、背屈位での内反ストレスに対する主要な抵抗体となります。
関節包との関係: 踵腓靭帯は関節包とは独立していますが、その深層線維の一部は、足関節の関節包と融合している場合もあります。
周囲の構造との関係: 腓骨筋（長腓骨筋、短腓骨筋）の腱は、踵腓靭帯の外側を通過し、そのすぐ後方には後距腓靭帯が存在します。これらの構造は互いに密接に関連し、足関節の安定化に寄与します。

機能的役割
踵腓靭帯の主な機能は以下の通りです。

足関節の内反制限: 足関節が内反（足裏が内側を向く）する際に、特に背屈位での内反を強力に制限します。これは、内反捻挫の主要な抵抗体の一つであることを意味します。
距骨下関節の安定化: 踵骨と距骨を結ぶことで、足関節の下に位置する距骨下関節 (subtalar joint) の安定性にも寄与します。距骨下関節は足部の回内・回外運動に関与するため、踵腓靭帯の機能不全は、この関節の動態にも影響を与える可能性があります。
足関節背屈位での安定性維持: 足関節を背屈させた際、前距腓靭帯の緊張が緩む代わりに、踵腓靭帯の緊張が増すことで、足関節全体の安定性を維持します。

臨床的意義
踵腓靭帯の損傷は、足関節内反捻挫において非常に頻繁に発生します。

内反捻挫: 足関節内反捻挫は、外側側副靭帯複合体の損傷であり、その中でも最も損傷しやすいのが前距腓靭帯です。しかし、より重度の内反捻挫（グレードIIまたはIII）では、踵腓靭帯も併せて損傷する可能性が高くなります。特に、足関節が背屈位で内反強制された場合に損傷しやすい傾向があります。
不安定性: 踵腓靭帯の断裂は、足関節の不安定性（特に慢性的な足関節不安定性）に大きく寄与します。この不安定性は、反復性の捻挫や、荷重時の不安感につながることがあります。
リハビリテーション: 踵腓靭帯損傷後のリハビリテーションでは、足関節の可動域改善、筋力強化（特に腓骨筋群）、固有受容感覚の回復が重要となります。

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前下脛腓靭帯(Anterior Inferior Tibiofibular

前下脛腓靭帯(Anterior Inferior Tibiofibular Ligament: AITFL)は、下腿遠位端にある脛骨と腓骨を結びつける強固な線維性組織であり、特に足関節の安定性において極めて重要な役割を果たす靭帯です。脛腓結合（syndesmosis）を構成する主要な要素の一つであり、足関節の背屈および外旋時に脛骨と腓骨が離開するのを防ぐ上で不可欠な構造です。

解剖学的起始と停止
前下脛腓靭帯は、脛骨と腓骨の遠位端にそれぞれ付着し、これらの骨を連結します。

起始: 脛骨の遠位前外側縁、特に脛骨前結節（anterior tibial tubercle, Tillaux-Chaput tubercle）の近傍から起始します。
停止: 腓骨の遠位内側面、特に腓骨外果の前縁（anterior malleolus of the fibula）に付着します。
この靭帯は、斜め下方および外側へと走行し、比較的薄く、2～3の線維束から構成されることが多いです。

構造と線維の走行
前下脛腓靭帯は、複数の線維束から構成されることが多く、その走行はやや斜め下方に向かっています。線維の走行方向は、足関節の動きによって張力が変化する特性を持っています。

浅層線維 (Superficial fibers): 比較的長く、脛骨前結節から腓骨外果の前縁に広く付着します。
深層線維 (Deep fibers): より短く、関節包と一体となっており、脛骨と腓骨の隣接する骨間縁に付着します。
この靭帯の深層には、関節包と関節軟骨が存在し、足関節関節腔の境界を形成しています。

機能的役割
前下脛腓靭帯は、脛腓結合の主要な安定化機構の一つであり、足関節の運動に伴う脛骨と腓骨の相対的な動きを制限します。

脛腓間の離開抑制: 足関節の背屈時に距骨が脛腓結合の間に入り込み、脛骨と腓骨をわずかに離開させようとしますが、前下脛腓靭帯はこの動きを制限し、脛腓間の安定性を維持します。特に、足関節の最大背屈位では、この靭帯に最大の張力がかかります。
回旋安定性: 下腿の回旋、特に足部の外旋を伴う動きにおいて、脛骨と腓骨が過度に分離・回旋するのを防ぎます。
足関節の安定性への寄与: 足関節の複合的な動き、特に捻挫時に発生する外旋ストレスに対して、主要な抵抗力となります。
脛腓結合の安定化には、前下脛腓靭帯の他に、後下脛腓靭帯 (Posterior Inferior Tibiofibular Ligament: PITFL)、脛腓骨間膜 (interosseous membrane)、および横脛腓靭帯 (transverse tibiofibular ligament) が関与しており、これらの構造が協調して機能することで、強固な脛腓結合が維持されています。

臨床的意義
前下脛腓靭帯は、足関節の靭帯損傷において、最も頻繁に損傷する靭帯の一つではありませんが、スポーツ活動などによる特定のメカニズムで損傷を受けることがあります。

脛腓結合損傷 (Syndesmotic injury / High ankle sprain): 一般的な足関節内がえし捻挫（外側側副靭帯損傷）とは異なり、足関節の強制的な背屈と外旋の組み合わせによって発生することが多いです。スポーツ、特にフットボールやスキーなどで見られます。

損傷メカニズム: 足部が固定された状態で、下腿が外旋したり、足関節が過度に背屈したりする力によって、前下脛腓靭帯に過剰な張力が加わり、損傷します。
症状: 外果上部の疼痛、足関節背屈時の疼痛、荷重時の疼痛、特に片足立ちや階段昇降時の痛みが特徴的です。内がえし捻挫に比べて、痛みが強く、回復に時間がかかる傾向があります。
分類: 損傷の程度に応じて、Grade I（軽度伸張）、Grade II（部分断裂）、Grade III（完全断裂と脛腓間の離開）に分類されます。
慢性的な不安定性: 適切に治療されなかった脛腓結合損傷は、慢性的な脛腓間の不安定性や足関節痛を引き起こすことがあります。

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腸脛靭帯(Iliotibial Band: ITB)は、大腿の外側を走行する強固な線維性結合組織であり、股関節と膝関節の両方の安定性および運動機能に深く関与しています。これは単なる靭帯というよりも、広筋群を覆う大腿筋膜張筋と大殿筋の腱膜性延長部として理解することがより適切です。

解剖学的起始と停止
腸脛靭帯は、いくつかの筋の腱線維が集まって形成される複合体です。

起始:
主に大腿筋膜張筋 (Tensor Fasciae Latae: TFL) の筋腹から連続する腱膜。TFLは、上前腸骨棘 (Anterior Superior Iliac Spine: ASIS) から起始します。
大殿筋 (Gluteus Maximus) の一部の線維も、その付着部から腸脛靭帯に合流します。特に、大殿筋の上部線維が腸脛靭帯の形成に大きく寄与します。
一部の文献では、中殿筋や外側広筋からも線維が合流するとされていますが、TFLと大殿筋が主要な構成要素です。
停止:
大腿骨の外側顆上を越えて脛骨の外側部に付着します。主な停止部位は、脛骨外側顆のGerdy結節 (Gerdy's tubercle) です。
膝関節周辺では、外側広筋や大腿二頭筋短頭の線維とも一部連続性を持ち、膝蓋骨の外側縁にも線維を送ることがあります。
一部の線維は膝関節の外側関節包や外側側副靭帯にも合流し、膝関節の安定性に寄与します。

構造と走行
腸脛靭帯は、非常に強固で厚い線維性シート状の構造であり、大腿の外側全体を覆う大腿筋膜の特に肥厚した部分として認識されます。その走行は、股関節から大腿外側を通り、膝関節外側を経て脛骨に付着します。

股関節部: 大転子を通過する際、大転子と腸脛靭帯の間には滑液包（大転子滑液包）が存在し、摩擦を軽減しています。
膝関節部: 膝関節の外側顆の上を通過します。膝関節の屈伸運動に伴い、腸脛靭帯は外側上顆の上を前後に滑動します。約30度の膝屈曲位で、腸脛靭帯の後縁が外側上顆を乗り越え、摩擦が生じやすいとされています。この部位にも滑液包（腸脛靭帯滑液包）が存在することがありますが、存在しない場合も多く、その場合は靭帯と骨、脂肪組織が直接接します。

機能的役割
腸脛靭帯は、股関節と膝関節の両方に対して多岐にわたる重要な機能を発揮します。
股関節の安定化:
股関節の外転と屈曲の補助: TFLと大殿筋の作用を介して、股関節の外転と屈曲を補助します。
骨盤の安定化: 片脚立位時など、骨盤の安定性を維持する上で重要な役割を果たします。特に、立脚相で骨盤が支持脚側に傾くのを防ぎます。
膝関節の安定化:
膝関節の外側安定性: 膝関節の外側側副靭帯とともに、膝関節の外側への過剰な開大（外反ストレス）を制限し、回旋不安定性を制御します。
膝関節の伸展補助: 膝関節が完全に伸展した際には、腸脛靭帯が膝関節の「ロック」を助け、安定した立位を保持するのに役立ちます。
膝関節の屈曲制限: 完全に伸展した膝関節においては、その強固さから屈曲を制限する傾向があります。

臨床的意義
腸脛靭帯に関連する病態として最もよく知られているのは、スポーツ選手に多く見られる腸脛靭帯炎 (Iliotibial Band Syndrome: ITBS) です。

腸脛靭帯炎 (ITBS):
定義: 膝関節の外側、特に外側上顆の近傍に疼痛を生じるオーバーユース症候群です。ランナー、サイクリスト、ハイカーなど、反復的な膝の屈伸運動を伴うスポーツを行う人に好発します。
病態生理: 従来の説では、膝の屈伸に伴う腸脛靭帯と外側上顆との間の摩擦が原因とされていました。しかし、最近の研究では、この摩擦による炎症だけでなく、腸脛靭帯深層にある脂肪体や、その近傍の結合組織の圧迫・炎症が疼痛の原因として重要視されています。また、大殿筋やTFLの機能不全、股関節の外転筋群の筋力低下、体幹の不安定性、ランニングフォーム、シューズの不適合なども複合的な要因として関与すると考えられています。
症状: 運動時、特に下り坂を走る際や、膝を約20～30度屈曲させた際に増悪する膝外側の鋭い疼痛が特徴的です。圧痛点も外側上顆のやや近位に認められます。

大転子部疼痛症候群 (Greater Trochanteric Pain Syndrome: GTPS):
腸脛靭帯が大転子と摩擦することで生じる滑液包炎やTFL/大殿筋の付着部炎も、腸脛靭帯に関連する病態の一つです。

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本日は休診です。

内側上膝神経(Superior Medial Genicular Nerve

内側上膝神経(Superior Medial Genicular Nerve: SMGN)は、大腿神経 (femoral nerve) から分岐する隠れる神経 (saphenous nerve) の主要な関節枝の一つであり、膝関節の内側および前内側部の感覚支配に特化した神経です。膝関節の疼痛、特に変形性膝関節症（OA）や膝関節置換術後の慢性疼痛において、その関与が近年注目されています。

起始と走行
内側上膝神経は、大腿神経の終末枝である隠れる神経から分岐します。隠れる神経は、大腿三角を通過した後、縫工筋と内側広筋の間を大腿部を下行し、大腿動脈に沿ってハンター管（大内転筋管）に入ります。このハンター管内で、隠れる神経は複数の膝関節への関節枝を分岐し、その中の一つが内側上膝神経です。

内側上膝神経は、大腿骨の内側上顆の近傍を走行し、内側広筋の深部を通過して、膝関節の内側および前内側部の関節包、滑膜、骨膜、および周囲の皮膚に分布します。

解剖学的ランドマークと隣接構造
内側上膝神経の局所解剖学を理解することは、神経ブロックやアブレーションの精度を高める上で重要です。

大腿骨内側上顆 (Medial femoral epicondyle): 神経が走行する主要な骨性ランドマークであり、触診の目印となります。
内転筋結節 (Adductor tubercle): 内側上顆のやや上方に位置し、内転筋腱が付着する場所です。神経はこれよりも近位に位置することが多いです。
大腿内転筋 (Adductor magnus): ハンター管を形成する筋肉の一部であり、神経がその近傍を走行します。
内側広筋 (Vastus medialis): 内側上膝神経は、この筋肉の深部を通過することが多いです。

機能的役割
内側上膝神経は、主に膝関節の内側および前内側部の疼痛伝達に関与します。具体的には、以下の部位からの感覚情報を伝達します。

膝関節の内側関節包 (Medial joint capsule of the knee)
内側滑膜 (Medial synovium)
大腿骨内側上顆の骨膜 (Periosteum of the medial femoral epicondyle)
内側半月板の一部 (Part of the medial meniscus) (直接的な神経支配は議論の余地があるが、周囲組織からの関連痛として関与する可能性)
膝関節内側および前内側の皮膚 (Skin of the medial and anteromedial knee) (この部分は皮神経である伏在神経の膝蓋下枝による支配が主であるが、一部オーバーラップする可能性も示唆されている)
これらの感覚情報は、膝関節の炎症、変性、外傷、または術後の疼痛として認識されます。

臨床的意義
内側上膝神経は、慢性膝関節痛の治療ターゲットとして、近年特に注目されています。

変形性膝関節症 (Knee Osteoarthritis: KOA) の疼痛:
KOAの患者において、膝関節内側の疼痛が主要な症状であることが多く、内側上膝神経がこの疼痛伝達に深く関与していると考えられています。
従来の治療法（薬物療法、理学療法、関節内注射など）で効果が不十分な場合、内側上膝神経をターゲットとした神経ブロックやラジオ波アブレーション（RFA）が、疼痛管理の有効な選択肢として導入されています。
膝関節置換術後の慢性疼痛 (Chronic post-knee arthroplasty pain):
膝関節置換術後も、約10〜30%の患者が遷延性の疼痛に悩まされると報告されています。
術後の神経損傷や瘢痕形成、あるいは既存の神経過敏化が原因で、内側上膝神経が疼痛の原因となっている場合があります。このような場合にも、内側上膝神経への介入が検討されます。
神経ブロック:
診断的ブロック：内側上膝神経に局所麻酔薬を注入し、疼痛が軽減するかどうかを評価することで、その神経が疼痛の原因であるかを診断します。
治療的ブロック：局所麻酔薬とステロイドを併用し、一時的な疼痛緩和を図ります。
ラジオ波アブレーション (Radiofrequency Ablation: RFA):
持続的な疼痛緩和を目的として、神経に高周波電流を流して熱凝固させ、疼痛伝達経路を遮断する治療法です。
X線透視ガイドや超音波ガイド下で行われ、神経の走行に沿って正確に針を刺入し、アブレーションを行います。
内側上膝神経は、膝関節の感覚支配において重要な役割を果たすため、RFAの成功率が高いと報告されています。

#PEAX
#FOCUS

研修に行って来ました。
皆さんお疲れ様でした！

本日研修の為休診です。

内側下膝神経(Inferior Medial Genic-ular Nerv

内側下膝神経(Inferior Medial Genic-ular Nerve: IMGN)は、大腿神経の主要な感覚枝である伏在神経 (Saphenous nerve) の終末枝の一つであり、膝関節前面の内側、特に膝蓋骨下方の皮膚感覚を支配します。膝関節外科手術や膝蓋骨周囲の痛みに関与するため、その解剖学的な特徴と臨床的意義を理解することは極めて重要です。

起始と走行
内側下膝神経は、伏在神経が膝関節付近に到達した後に分岐します。伏在神経は、大腿三角から縫工筋（sartorius muscle）の下を大腿内側を下行し、大内転筋管（adductor canal, Hunter's canal）を通過します。

膝関節のやや上から関節裂隙にかけて、伏在神経は複数の枝を分岐しますが、内側下膝神経はその中でも特に重要な枝です。一般的に、内側下膝神経は、縫工筋の深層から浅層へ貫通し、膝蓋骨下方の皮膚に分布します。その走行には個人差が大きく、単一の神経として走行することもあれば、複数の小枝に分かれて走行することもあります。

起始:伏在神経（大腿神経の終末感覚枝）
走行:
伏在神経から分岐後、縫工筋の深層から、同筋を貫通するか、あるいはその縁を迂回して浅層に現れる。
膝蓋骨の下縁（膝蓋靭帯の内側）を横切り、脛骨粗面の内側、膝蓋下脂肪体（Hoffa's fat pad）の上を走行する。
膝関節の内側および前面の皮膚に分布する。

解剖学的特徴とバリエーション
内側下膝神経の解剖学的バリエーションは非常に豊富であり、臨床的アプローチに影響を与えます。

縫工筋の貫通:縫工筋を貫通するパターンが最も一般的ですが、縫工筋の内側または外側縁を走行するバリエーションも存在します。貫通部位も多様です。
分枝パターン:単一の太い枝として走行することもあれば、膝関節に到達する前に複数の細い枝に分岐し、扇状に広がることもあります。これらの枝は、膝蓋骨下方の皮膚に広範囲に分布します。
膝蓋神経叢との交通:内側下膝神経の枝は、膝関節前面で他の皮神経（例：中間大腿皮神経、外側大腿皮神経の枝など）と交通し、膝蓋神経叢（patellar plexus）を形成することがあります。

支配領域
内側下膝神経の主要な支配領域は以下の通りです。

感覚支配:
膝蓋骨の下方から脛骨粗面にかけての皮膚
膝関節の内側部の一部皮膚
膝蓋靭帯の内側部
膝関節包の前面内側の一部（関節固有受容器としての機能も示唆されている）

臨床的意義
内側下膝神経は、膝関節周囲の痛みや外科手術において重要な神経です。

1. 膝関節手術における損傷:
膝関節鏡視下手術:前内側ポータル（entry point）を設定する際に、内側下膝神経が損傷されるリスクがあります。特に、ポータルを膝蓋靭帯に近い位置に設定する場合にリスクが高まります。
人工膝関節置換術 (TKA):内側からのアプローチやインプラントの設置に関連して、神経が牽引されたり、切断されたりする可能性があります。
前十字靭帯再建術 (ACL reconstruction):大腿四頭筋腱や膝蓋腱を採取する際に、神経が損傷されるリスクがあります。
高位脛骨骨切り術 (HTO):脛骨の内側からのアプローチで神経が損傷される可能性があります。
症状:手術後の膝蓋骨下内側の知覚鈍麻、しびれ、異常感覚（ジセステジア、パレステジア）が最も一般的な症状です。神経腫の形成により、慢性的な痛みが持続することもあります。

2. 内側下膝神経痛 (Infrapatellar Neuralgia):
外傷（打撲、挫傷）、膝関節の反復運動、手術後の神経損傷、あるいは絞扼により、内側下膝神経が刺激されて疼痛を引き起こすことがあります。
疼痛は、膝蓋骨下内側に限局し、触診で増強することが特徴です。特に、膝を深く屈曲する動作で痛みが誘発されることがあります。
診断は、詳細な病歴聴取、身体診察、および神経ブロック注射（診断的ブロック）が有用です。

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内側膝蓋大腿靱帯(Medial Patellofemoral Lig

内側膝蓋大腿靱帯(Medial Patellofemoral Ligament: MPFL)は、膝蓋骨の安定性において最も重要な静的安定化機構の一つであり、特に膝蓋骨の外側脱臼や亜脱臼を防止する上で中心的な役割を担っています。その解剖学的特徴、生体力学的機能、および臨床的意義を理解することは、膝蓋骨不安定症の診断と治療において不可欠です。

解剖学的起始と停止
MPFLは、大腿骨の内側上顆と膝蓋骨の内側縁を結ぶ線維性の構造です。
起始 (大腿骨側):
MPFLの大腿骨付着部は、内側上顆の近位前方、内側大腿骨遠位端の解剖学的ランドマークである内転筋結節 (adductor tubercle) のやや遠位、および内側上顆の遠位近傍の深部にある浅層の陥凹部（Schottle’s point, Blumensaat’s lineの後方延長上）に広範囲に付着します。この付着部は、単一の点ではなく、より広い領域を占めることが重要です。
停止 (膝蓋骨側):
MPFLの膝蓋骨付着部は、膝蓋骨の内側縁の近位2/3に広範囲に付着します。特に、膝蓋骨の内側縁中央部から近位に向かって付着する線維が、膝蓋骨の安定性において最も重要であると考えられています。

組織学的特徴と線維の走行
MPFLは、主にタイプIコラーゲンから構成される緻密な結合組織です。その線維の走行は、膝蓋骨から大腿骨に向かって斜め上方および後方に走行します。
MPFLは、その深層で膝関節包の内側層と連続しており、また一部の線維は内側膝蓋支帯 (medial patellar retinaculum) や内側広筋 (vastus medialis) の腱膜と融合しているため、複合的な構造を形成しています。これにより、膝蓋骨の動的な安定化（内側広筋斜頭: VMO）と静的な安定化（MPFL）が密接に連携しています。

生体力学的機能
MPFLは、膝関節が伸展位にある時、特に屈曲0°〜30°の範囲で膝蓋骨の外側移動を最も強力に制限します。
膝蓋骨の外側移動の制限:膝蓋骨の外側脱臼や亜脱臼に対する主要な抵抗力であり、膝蓋骨が外側に偏位するのを防ぎます。
膝蓋骨の安定化:大腿骨の滑車溝内での膝蓋骨の適切な追従を維持し、関節の安定化に寄与します。
屈曲角度による張力の変化:膝関節の屈曲角度が深くなるにつれて、MPFLの張力は徐々に低下します。これは、膝関節が深屈曲位になると、大腿骨の滑車溝が深くなり、骨形態による膝蓋骨の安定性が高まるため、MPFLの役割が相対的に小さくなるためと考えられます。

MPFLは、膝蓋骨の外側脱臼に対する抵抗力の約50〜60%を担うとされており、その重要性が強調されています。残りの抵抗力は、内側膝蓋支帯、内側広筋斜頭、および大腿骨滑車溝の形態などによって提供されます。

臨床的意義
MPFLは、膝蓋骨不安定症の病態生理において中心的な構造です。
膝蓋骨脱臼/亜脱臼:
膝蓋骨の外側脱臼は、多くの場合、MPFLの断裂を伴います。特に初回脱臼では、MPFLの損傷がほぼ必発とされています。
MPFLの断裂や伸張性増大は、反復性膝蓋骨脱臼の主要な原因となります。

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外側側副靱帯(Lateral Collateral Ligament: LC

外側側副靱帯(Lateral Collateral Ligament: LCL)は、膝関節の外側に位置する主要な安定化機構の一つであり、特に下腿の外反ストレスに対する抵抗性を提供します。膝関節の外側複合体（posterolateral corner: PLC）の一部として機能し、回旋安定性にも寄与します。その解剖学的特徴と機能的役割を理解することは、膝関節の外傷診断と治療において不可欠です。

解剖学的起始と停止
LCLは、大腿骨の外側上顆から起始し、腓骨頭へと走行する強力な索状の靱帯です。この靱帯は、関節包外に位置する独立した構造であり、半月板とは直接連結していません。

起始:大腿骨外側上顆（lateral epicondyle of the femur）の後上方。大腿骨への付着部は、大腿骨外側上顆の中心からやや後方に位置し、大腿骨の屈曲・伸展位によってLCLの緊張が変化する「等尺性」ポイントに近いとされています。
停止:腓骨頭（fibular head）の前面。腓骨頭への付着部は、一般的に腓骨頭の近位前面に位置し、大腿二頭筋腱の付着部と密接に関連しているか、あるいはその深層に存在することが多いです。

構造と特徴
LCLは、その線維が密に平行に走行する索状靱帯であり、膝関節の外側部で容易に触診することができます。関節包外にあるため、滑膜とは直接接触せず、損傷しても関節内血腫（hemarthrosis）を伴わないことが多いとされています。
長さと緊張:膝関節の屈曲・伸展に伴い、LCLの長さと緊張はわずかに変化しますが、全体としては膝関節の全可動域にわたって比較的安定した張力を保つ「機能的等尺性」を示します。伸展位で最も緊張が高まり、屈曲位ではやや緩む傾向があります。
他の構造との関係:LCLは、膝関節の外側複合体（PLC）を構成する他の重要な構造と密接に関連しています。
大腿二頭筋腱 (Biceps femoris tendon):LCLの停止部近傍で腓骨頭に付着し、LCLの安定性に寄与するとともに、損傷時には共同で評価されるべき構造です。
弓状靱帯複合体 (Arcuate ligament complex):弓状靱帯、斜腓窩靱帯、後外側関節包などから構成され、LCLとともにPLCの安定性に関与します。
膝窩筋腱 (Popliteus tendon):膝窩筋は、膝関節の後外側に位置し、LCLと隣接して走行します。
腸脛靱帯 (Iliotibial band):膝関節の外側を走行し、LCLの表層に位置します。

機能的役割
LCLの主な機能は、以下の通りです。
外反ストレスに対する抵抗:膝関節への外反力（下腿が外側へ開く力）に対して主要な静的安定化機構として機能します。これは、膝関節の最も重要な機能の一つであり、損傷時には膝の外反不安定性（外反動揺性）が生じます。
後方移動の制限（ある程度）:膝関節の伸展位において、後方への脛骨の移動をある程度制限します。これは、LCLが後十字靱帯（PCL）の補助的な安定化機構として機能することを示唆しています。

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回旋安定性の寄与:膝関節の伸展位において、外旋に対する抵抗性にも寄与します。特に、脛骨の外旋を制限する上で、LCLはPLCの他の要素（例：膝窩筋腱、弓状靱帯複合体）と協調して機能します。

臨床的意義
LCLの損傷は、膝関節の外傷において比較的頻繁に発生します。単独損傷のほか、複合靱帯損傷の一部として生じることがあります。
損傷機序:膝関節内側からの外反ストレス（例：ラグビーやアメリカンフットボールでのタックル、スキーでの転倒など）や、過伸展を伴う回旋ストレスによって生じることが多いです。
症状:
疼痛:膝関節の外側部に限局した疼痛。
腫脹:関節包外の靱帯であるため、関節内血腫は少ないですが、周囲の組織損傷に伴う腫脹は認められます。
不安定感:特に体重負荷時や方向転換時に、膝が外側にガクッとずれるような感覚（外反動揺性）を訴えることがあります。
圧痛:LCLの起始部（大腿骨外側上顆）や停止部（腓骨頭）に圧痛が認められます。

内側半月板 (Medial Meniscus)は、膝関節の脛骨大腿関節における重要な線維軟骨性構造であり、荷重分散、衝撃吸収、関節安定性、関節液の循環促進、および固有受容性機能に寄与します。その独特な解剖学的特徴と機能的役割は、膝関節のバイオメカニクスと病態生理学を理解する上で不可欠です。

解剖学的特徴
内側半月板は、C字型または三日月形をしており、その外周は関節包および内側側副靱帯（MCL）の深層線維と強固に結合しています。このMCLとの結合は、外側半月板が大腿骨外側顆と脛骨外側顆の間で比較的自由に動くのに対し、内側半月板の可動性を制限する要因となります。

形状とサイズ: 外側半月板よりも大きく、厚く、C字型の湾曲が緩やかです。平均的な前後径は約4.5cm、幅は約3cmです。
付着部:
前角 (Anterior horn): 脛骨顆間隆起の前方、前十字靱帯 (ACL) の付着部の前方に位置する脛骨プラトーに付着します。
後角 (Posterior horn): 脛骨顆間隆起の後方、後十字靱帯 (PCL) の付着部の後方に位置する脛骨プラトーに付着します。
周囲縁 (Peripheral margin): 内側半月板の大部分は、関節包の内側壁を介して脛骨に強固に付着しています（冠状靱帯、または脛骨半月板靱帯）。
血管供給 (Blood Supply):
内側半月板は、主に関節包の周囲にある滑膜および膝関節包動脈網（特に膝下動脈の枝）から栄養供給を受けます。
血管は半月板の外周から内部に向かって走行し、約10〜30%の外側縁（red zone）に血管が分布しています。この領域は損傷した場合に治癒能力が高いとされます。
内側部分は無血管域（white zone）であり、栄養は関節液からの拡散によって供給されるため、損傷した場合の治癒能力は極めて低いです。
神経支配 (Innervation): 脛骨神経からの小枝が半月板の外周部に分布しており、痛覚受容体と機械受容体が存在します。これにより、関節の安定性と運動覚に寄与していると考えられています。

機能的役割
内側半月板は、膝関節の正常な機能と長期的な健康維持に不可欠な複数の役割を担っています。

荷重分散 (Load Transmission):
脛骨プラトーの適合性を向上させ、大腿骨顆と脛骨プラトー間の接触面積を約50%増加させます。これにより、膝関節にかかる荷重が広範囲に分散され、軟骨にかかる単位面積あたりの圧力が軽減されます。
半月板切除後には、接触圧が200〜300%増加すると報告されており、これが関節軟骨の変性（変形性膝関節症）を加速させる主要因となります。
衝撃吸収 (Shock Absorption):
関節にかかる衝撃荷重を緩和し、軟骨および骨組織へのストレスを軽減します。
関節安定性 (Joint Stability):
特に、ACLが損傷している場合や、脛骨の前方移動を抑制する上で重要な二次的な安定化機構として機能します。
後角は、脛骨の前方移動を制限する上で特に重要です。
半月板のC字型形状は、大腿骨顆が関節窩から滑り落ちるのを防ぐ「くさび」のような役割を果たします。
関節液の循環促進と栄養供給 (Joint Fluid Circulation and Nutrition):
荷重が加わる際に、半月板が変形することで関節液が絞り出され、非荷重時に再び吸い込まれることで、関節軟骨への栄養供給と老廃物の排出を促進します（ポンプ作用）。
固有受容性機能 (Proprioception):
外周部に存在する機械受容体と痛覚受容体により、膝関節の位置覚と運動覚に寄与し、関節の協調運動と保護反射に関与します。

臨床的意義と損傷
内側半月板は、外側半月板と比較して可動性が少ないため、スポーツ活動中のねじりや軸圧によって損傷しやすい傾向にあります。

損傷機序:
急性損傷: 膝の屈曲位での軸圧と回旋（特に外旋を伴う内反ストレス）が主な原因となります。スポーツ外傷（スキー、サッカー、バスケットボールなど）で頻繁に発生します。ACL損傷に合併して発生することも多いです（Unhappy Triad: ACL損傷、内側半月板損傷、MCL損傷）。
変性損傷: 加齢に伴う半月板組織の変性により、軽微な外力や繰り返しのストレスでも損傷が発生しやすくなります。中高年層に多く見られます。
症状: 膝関節の疼痛（特に内側関節裂隙の圧痛）、ロッキング現象（膝が完全に伸びない）、キャッチング（膝が引っかかる感覚）、クリック音、腫脹などがあります。
診断: 身体所見（マクマレーテスト、Apleyテストなど）、MRI（最も有用）、関節鏡検査（確定診断と治療を兼ねる）などによって行われます。

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膝蓋下脂肪体 (Infrapatellar Fat Pad / Hoffa'

膝蓋下脂肪体 (Infrapatellar Fat Pad / Hoffa's Fat Pad)は、膝関節前面に位置する重要な関節内構造物であり、その解剖学的特徴、生理学的機能、および病態生理は、膝関節の機能と疼痛を理解する上で不可欠です。一般に「ホッファ脂肪体 (Hoffa's fat pad)」としても知られています。

解剖学的特徴
膝蓋下脂肪体は、膝蓋骨の遠位（下方）と脛骨粗面（脛骨上端前面の隆起）の近位（上方）の間、および大腿骨顆部前面と脛骨関節面との間に位置する、高度に血管に富んだ神経支配された脂肪組織です。

位置:膝蓋靱帯（膝蓋腱）の深層、関節包の内部にありますが、滑膜とは分離されています。つまり、関節包内、滑膜外に位置する構造です。
形状:不定形な楔状を呈し、その形状は膝関節の屈伸に応じて変化します。伸展位では脛骨と大腿骨の間に広がり、屈曲位では圧迫されて後方に押し込まれます。
血管支配:豊富な血管供給を有しており、特に膝蓋下動脈からの枝が供給されます。この豊富な血流は、代謝活動と修復能力に寄与します。
神経支配:膝関節の他の脂肪体と比較して、特に豊富な神経終末（メカノレセプター、侵害受容器）が存在することが知られています。これは、脂肪体が膝関節の感覚受容と疼痛発生において重要な役割を果たすことを示唆しています。特に、脛骨神経の膝関節枝（後方）および大腿神経の膝関節枝（前方）からの神経支配を受けます。

生理学的機能
膝蓋下脂肪体は、かつては単なる充填組織と考えられていましたが、近年の研究により多岐にわたる生理学的機能を持つことが明らかになっています。
1. 機械的保護とクッション機能:
膝蓋骨、膝蓋靱帯、および周囲の関節構造に対する物理的な緩衝材として機能し、衝撃吸収と応力分散に寄与します。
膝関節の屈曲・伸展運動中に、膝蓋骨と大腿骨顆部の間に挟まれて、これらの構造を機械的ストレスから保護します。
2. 関節液の分布と潤滑:
その柔軟性と形状変化能力により、関節内の圧力を均等に分散させ、関節液の循環と軟骨の潤滑を促進する可能性があります。
3. バイオメカニクス的役割:
膝関節の伸展時に、大腿骨と膝蓋靱帯の間を埋め、膝蓋骨の適切な軌道と機能に寄与します。
4. 代謝機能:
脂肪組織であるため、脂肪酸代謝やサイトカイン産生などの代謝活動に関与し、膝関節の局所的な恒常性維持に貢献する可能性があります。炎症性サイトカインや増殖因子を産生し、関節内環境に影響を与えることが示唆されています。
5. 感覚受容機能:
豊富な神経支配により、膝関節の位置感覚（固有受容）と疼痛感覚の両方に関与します。関節の過伸展や圧迫などの異常なストレスを感知し、関節の保護反応を誘発する可能性があります。

病態生理と臨床的意義
膝蓋下脂肪体は、その位置と機能から様々な病態の標的となり得ます。
1. ホッファ病 (Hoffa's Disease / Hoffa's Syndrome):
膝蓋下脂肪体の炎症性疾患で、外傷（特に反復性の微細外傷や過伸展）、長期にわたる圧迫、または特定の膝関節のバイオメカニクス的要因によって引き起こされます。
症状:膝蓋骨下方の疼痛（特に膝関節の伸展時や長時間立位時）、膝蓋靱帯の両側または深部への圧痛、膝蓋骨下方の腫脹。時に、膝の「つっかかり感」や「ロック」感を訴えることもあります。
病理:脂肪体の肥大、線維化、浮腫、血管新生、および炎症性細胞の浸潤が認められます。
2. インピンジメント症候群:
膝関節の過伸展時や特定の運動パターン時に、膝蓋下脂肪体が大腿骨顆部と脛骨関節面の間に挟み込まれ（インピンジメント）、機械的刺激と疼痛を引き起こすことがあります。
3. 炎症性疾患との関連:
変形性膝関節症や関節リウマチなどの炎症性関節疾患において、膝蓋下脂肪体が炎症性メディエーターの産生源となり、疾患の進行や疼痛に関与する可能性が示唆されています。
4. 膝蓋骨不安定症との関連:
膝蓋下脂肪体の肥大や線維化は、膝蓋骨の動きを制限し、膝蓋骨不安定症の一因となることがあります。

まとめ
膝蓋下脂肪体は、膝関節の保護、クッション、感覚受容、および代謝機能に関与する多機能な構造です。ホッファ病に代表される炎症性疾患やインピンジメント症候群の主要な原因となることがあり、膝関節前面の疼痛を呈する患者において鑑別診断の一つとして常に考慮されるべきです。適切な診断と保存的治療が重要であり、難治例では外科的介入が検討されます。

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トレーニング 5th MTB base

トレーニング
5th MTB base

トレーニング CFL長軸

今日はじゅん整骨院で勉強会でした。
夏季学術のSSP、LHB描出指導手順

後距腓靱帯(Posterior Talofibular Ligament: PT

後距腓靱帯(Posterior Talofibular Ligament: PTFL) は、足関節外側靱帯複合体 (lateral ankle ligament complex) を構成する3つの主要な靱帯（前距腓靱帯、踵腓靱帯、後距腓靱帯）の一つであり、足関節の安定性、特に足関節の背屈位における安定性に重要な役割を果たします。足関節の過度な内反と前方への滑りを制限する上で不可欠な構造です。

解剖学的起始と停止
後距腓靱帯は、腓骨の遠位端にある腓骨外果の内面から起始し、距骨の後外側にある距骨結節 (posterior process of the talus) に停止します。
起始:腓骨外果の内面（腓骨窩の上方）
停止:距骨の後外側にある距骨結節の外側部

構造と走行
後距腓靱帯は、比較的短く厚い線維束であり、水平に近い走行を示します。これは、足関節の底屈位では比較的緩み、背屈位で緊張するという機能的特徴を反映しています。

形状:扇形または板状を呈することが多く、その線維は起始部から停止部に向かって広がる傾向があります。

関節包との関係:足関節の後方関節包の深層に位置し、関節包の補強構造としても機能します。

機能的役割
後距腓靱帯は、足関節の安定性、特に回旋安定性において重要な役割を果たします。

1. 足関節の背屈位での安定化
足関節が背屈位にあるときに最も緊張し、距骨の過度な前方移動と足関節の回旋不安定性を制限します。
この機能は、足関節の背屈を伴う着地動作や急な方向転換時に特に重要となります。
2. 距骨の回旋制限:
腓骨と距骨の間の過度な内旋（脛骨に対する距骨の外旋）を制限します。
これは、足関節のインピンジメントや他の靱帯への負担を軽減する上で重要です。
3. 足関節の過度な内反制限（間接的な役割）:
直接的には内反制限に寄与する程度は小さいですが、踵腓靱帯や前距腓靱帯が損傷した場合に、その役割を一部代償することで、全体的な内反安定性に関与します。

臨床的意義
後距腓靱帯の損傷は、足関節の外側靱帯損傷の中でも比較的重症なものと関連していることが多いです。

足関節捻挫:
通常、足関節の内反捻挫では、まず前距腓靱帯、次いで踵腓靱帯が損傷し、重度の場合に後距腓靱帯が損傷します。
後距腓靱帯の単独損傷は非常に稀であり、通常は重度の足関節捻挫（グレードIII）に伴い、他の外側靱帯（特に前距腓靱帯と踵腓靱帯）の損傷とともに発生します。
後距腓靱帯の損傷は、足関節の慢性的な不安定性や、距骨の不安定化に寄与する可能性があります。
距骨後方インピンジメント症候群 (Posterior ankle impingement syndrome):
距骨後方にある距骨三角骨（os trigonum）の存在や、距骨後方の骨棘形成などにより、足関節の底屈時に後距腓靱帯が挟み込まれ、疼痛を引き起こすことがあります。

まとめ
後距腓靱帯は、足関節外側靱帯複合体の一部として、特に足関節の背屈位における回旋安定性と距骨の安定化に重要な役割を果たします。単独損傷は稀であり、通常は重度の足関節捻挫に伴い、他の外側靱帯損傷とともに発生します。診断には、触診、ストレスレントゲン検査、そして特にMRIが有用です。治療は保存療法が主体となりますが、慢性的な不安定性がある場合には外科的治療も考慮されます。足関節の機能回復と再損傷予防のためには、後距腓靱帯を含む外側靱帯複合体全体の機能評価と適切なリハビリテーションが不可欠です。

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